友人が長期投資を検討しているとき、迷わず「eMAXIS Slim(米国株式 S&P500)」を勧めています。理由は長期投資では低コストの商品が断然優位だからです。
でも私自身はVOOなどのさらに低コストなETFを買っています。このため友人に「eMAXISとETFはどう違うのか?」と質問されました。
「eMAXISは配当金を自動的に再投資してくれるが、ETFは手動なので手間」と答えたものの、私自身は答えが怪しいなと感じました。ということで今回は「『eMAXIS Slim米国株 S&P500』は株の配当金を本当に再投資しているのか?」を調べてみました。
eMAXIS Slim米国株式S&P500の仕組み
発売元の三菱UFJ国際投信のWebサイトによると以下のようにマザーファンドを通して米国株を購入する仕組みで運営されています。

結局のところ米国株を買ってるわけですから、配当金は確実に誰かが受け取っているわけです。問題はそれがeMAXIS Slimへ組み込まれているかですね。
S&P500指数との比較
S&P500指数は「S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス」社がピックアップした500銘柄の平均株価です。ここには配当金は含まれていません。
ということは本当にeMAXISが配当金を再投資していれば、配当金の分だけS&P500より良いパフォーマンスになっているはずです。eMAXIS Slimの運用が始まった2018/7/3を基準日として、S&P500と比較してみました。

<注意>
- 基準日である2018/7/3の価格を10,000としたときの比較です。
- eMAXISは円で取引されているのでドルベースへ変換しています。
少しずつeMAXISがS&P500より高くなってる感じはしますね。差分を見てみます。

為替の影響のせいか、差分値はかなりブレているものの、トレンドとしては少しずつeMAXISが上回っているようです。そのペースは大体2年で3.5%なので、年1.7%程度でしょうか。
つまり結論としては
- eMAXIS Slim米国株S&P500は配当金を再投資している。
- その分だけ「S&P500指数」よりもパフォーマンスが良い。
- その利回りは年1.7%程度である(直近2年は)
と言えそうです。
では1.7%って妥当なのか?(VOOと比較)
でも仮に個別株の配当金が年5%も出てるのにeMAXISの利回りが年1.7%だとしたら大損です。ということで次に同じS&P500指数をベンチマークしているETFである「VOO」と比較してみます。
分配金 | 年間利回り | |
2019/12 | $1.43 | 1.94% |
2020/3 | $1.18 | 1.79% |
2020/6 | $1.43 | 2.05% |
2020/9 | $1.31 | 1.71% |
VOOはeMAXISと違って配当金(「分配金」と呼ぶ)が貰えます。金額は上記表のとおりで年2%程度の平均利回りに相当します。
eMAXISとVOOの配当金も本来は同程度のはずですから、eMAXISの利回り1.7%は低いのか?というと実はそうでもありません。
VOOの利回りは税金で大きく目減りする
上で書いたVOOの分配金は税抜きです。分配金は受け取った時点で日本の税金が発生します(これはETFの大きなデメリット)。税率は20.315%ですので税込みの利回りは以下となります。
VOOの平均利回り | 日本の税率 | VOOの実質的な利回り |
約2% | 20.315% | 1.59% ※ |
※<注意>
確定申告で米国側の10%課税を控除した場合の利回り。確定申告しない場合はさらに10%の税金がかかるため利回りは1.39%となる。
eMAXIS Slimは分配金への税金がかからない
前述のとおりeMAXIS Slimは配当金は運営側が勝手に再投資してくれます。この場合は日本の税金がかかりません。このため利回りはeMAXISの方がわずかに良いのです。
ただ、米国側だけの税率は10%程度であることを考えると、eMAXISの運営側は再投資時に配当金の0.1%程度は手間賃を抜いてそうですね。
まとめ/わずかな差のため、手間のかからないeMAXISが良い
投資信託とETFの大きな違いである配当金を考慮したときに、eMAXIS Slim米国株 S&P500が本当に有利かを確認してみました。VOOとの比較をすると以下の通りとなります。
eMAXIS Slim米国株 S&P500 | VOO | |
ベンチマーク指標 | S&P500 | S&P500 |
手数料・信託報酬 | 年0.0968% | 年0.03% |
通貨 | 円(為替リスクあり) | ドル |
配当金・分配金 | なし (自動的に再投資してくれる) | 年4回 (手動で再投資しなければならない) |
配当金に関する利回り | 1.7%程度 | 1.59%程度 |
eMAXISは配当金の利回りで有利、VOOは手数料・信託報酬で有利です。ただどちらも正直ほとんど変わりません。数百〜数千万円の投資金額なら年間1,000円以下の違いではないでしょうか。
であればより手間が少ないeMAXISの方が良い、というのが今回の結論となります。
それではみなさま、良き投資ライフをお過ごしください。